少子高齢化による過疎地の交通問題、東京一極集中に代表される都市交通問題など従来指摘されている交通問題に加え、経済のグローバル化は交通に新たな課題を突きつけています。さらに近年では災害の激甚化や巨大地震への対策なども交通における喫緊の課題となっています。そして新型コロナウイルス感染症は交通サービスにも大きな打撃を与えました。このように、先の読みにくい社会環境の中で交通問題はますます複雑化そして深刻化しています。
どれほどIT化、自動化が進もうとも、最終的にはヒトの動き、モノの動きを止めることはできません。交通サービスは重要なライフラインであることは誰しも認めることでしょう。人々の生活水準の向上によって、交通サービスにはより高い品質が求められており、その一方で上記のように課題は山積しており、これまで以上に交通に関する研究は重要度を増しているといえます。
また、交通に関する研究は人文科学、社会科学、自然科学にまたがり、非常に学際的です。各分野の研究者の英知を集め、これらの課題を克服する必要があります。本学会の学会誌のタイトルが「『交通学』研究」となっており、特定の学問分野にこだわらないタイトルとなっているのはその表れと言えるでしょう。
日本交通学会は1941年設立の東亜交通学会が前身であり、2021年で設立80周年を迎えた長い伝統を有する学会です。本学会は、経済学、経営学などの社会科学の研究者が中心となっていますが、それだけではなく自然科学(特に工学系)の研究者も参加しており、他分野の学会との交流も行なわれています。また実務家や交通事業者も多く学会員として参加していることが学会の厚みを増しています。研究分野にとらわれず、また研究者・実務家の区別を問わず交通問題に対峙し、有意義な知見や成果を求めて多くの研究活動が進められています。
竹内 健蔵
日本交通学会は、「交通の学術的研究を促進し、交通に関する知識を普及し、交通の健全な発展に資する」(日本交通学会会則)ことを目的として、鉄道、道路、航空、海運などの交通政策の課題について交通経済学を中心として研究する学会です。
この目的を達成するために、総合交通政策、都市と交通、地域交通、運賃論、民営化・規制緩和、環境問題など多岐にわたる研究を研究報告会、部会、講演会などで報告するとともに、学会機関誌(交通学研究)、図書などを発行するなど、研究の助成その他の必要な事業を行っています。
会員は、交通経済学に関心のある研究者、交通工学の専門家・研究機関をはじめ、官庁や事業者など約470から構成されています。
また、今日のグローバリゼーションの中、当学会は、交通経済学の世界で、国際的にも高い評価を得ており、2011年には、神戸で創立70周年記念国際シンポジウム開催しました。
日本交通学会は、社会・経済を支えるよりよき交通政策のために、交通政策に関心を持つすべての方々に会員への道を開いています。
1941年12月8日 | 東亜交通学会創立総会開催 小川郷太郎(鉄道大臣)、村田省蔵(逓信大臣)の共同出損により 財団法人「東亜交通学会」発足 |
1942年 | 第1回研究報告会開催(以後第10回まで学会主催) |
1944年 | 戦争激化のため研究報告会一時中断 |
1945年 | 空襲により学会事務局焼失 |
1946年 | 新たに創設された運輸調査局に財団法人格を譲り、任意団体「日本交通学会」と改称して再発足 |
1947年 | 研究報告会復活(第6回) |
1952年 | 第11回研究報告会から、大学等の持ち回りによる主催 |
1954年 | 関東、関西部会設立 |
1957年 | 第16回研究報告会から、研究年報 『交通学研究』刊行 |
1959年 | 第18回研究報告会から、研究報告会運営方法を変更 -〈統一論題〉と〈自由論題〉に分けて報告- |
1970年 | 旧西ドイツの交通学会と国際学術交流をめざして交流の契約締結 |
1974年 | 年次大会を兼ねて国際会議開催(ハンブルク) |
1977年 | 日独交通政策シンポジウム開催(東京) |
1982年 | 旧東ドイツ交通学会主催による国際会議開催(ドレスデン) |
1991年 | 韓国交通学会と学術交流の提携 |
2001年 | 創立60周年記念国際シンポジウム開催(大阪) |
2006年 | 日韓国際交流シンポジウム開催(大阪) |
2007年 | 『交通学研究創刊50号記念』装丁版発行 |
2008年 | 第67回研究報告会から、研究報告会運営方法を変更 -〈統一論題〉と〈自由論題〉の区分を廃止し、報告・投稿論文はすべて 〈研究論文〉とする- |
2011年 | 創立70周年記念国際シンポジウム開催(神戸) 『交通経済ハンドブック』刊行 |
2016年 | 創立75周年記念シンポジウム開催(東京) |
2021年 | 創立80周年記念大会(東京) |
(2024年10月現在) | |
正会員 | 442名 (名誉会員8名を含む) |
学生会員 | 2名 |
特別会員 | 29団体 |
1941年(昭和16年)~ 1973年(昭和48年) |
島 田 孝 一 |
1973年(昭和48年)~ 1979年(昭和54年) |
麻 生 平八郎 |
1979年(昭和54年)~ 1983年(昭和58年) |
今 野 源八郎 |
1983年(昭和58年)~ 1987年(昭和62年) |
増 井 健 一 |
1987年(昭和62年)~ 1991年(平成3年) |
廣 岡 治 哉 |
1991年(平成3年)~ 1995年(平成7年) |
岡 野 行 秀 |
1995年(平成7年)~ 1999年(平成11年) |
藤 井 彌太郎 |
1999年(平成11年)~ 2001年(平成13年) |
山 田 浩 之 |
2001年(平成13年)~ 2003年(平成15年) |
杉 山 雅 洋 |
2003年(平成15年)~ 2005年(平成17年) |
斎 藤 峻 彦 |
2005年(平成17年)~ 2007年(平成19年) |
杉 山 武 彦 |
2007年(平成19年)~ 2011年(平成23年) |
宮 下 國 生 |
2011年(平成23年)~ 2013年(平成25年) |
塩 見 英 治 |
2013年(平成25年)~ 2015年(平成27年) |
中 条 潮 |
2015年(平成27年)~ 2017年(平成29年) |
正 司 健 一 |
2017年(平成29年)~ 2019年(令和元年) |
山 内 弘 隆 |
2019年(令和元年)~ 2021年(令和3年) |
寺 田 一 薫 |
2021年(令和3年)~ 2023年(令和5年) |
水 谷 文 俊 | 2023年(令和5年)~ | 竹 内 健 蔵 |
1970年(昭和45年) 以前より** |
小島 昌太郎* |
1974年(昭和49年)~ | 島田 孝一* |
1985年(昭和60年)~ | 伊坂 市助*/今野 源八郎*/高橋 秀雄*/富永 祐治* |
1989年(平成元年)~ | 麻生 平八郎*/佐竹 義昌*/前田 義信*/増井 健一* |
1992年(平成4年)~ | 角本 良平* |
1998年(平成10年)~ | 佐々木 誠治*/秋山 一郎*/廣岡 治哉* |
2003年(平成15年)~ | 武田 文夫*/中西 健一*/榊原 胖夫*/岡野 行秀*/岡田 清*/ 五十嵐 日出夫*/田原 榮一* |
2005年(平成17年)~ | 藤井 彌太郎*/丸茂 新 |
2007年(平成19年)~ | 山田 浩之 |
2016年(平成28年)~ | 斎藤 峻彦*/杉山 武彦/杉山 雅洋/宮下 國生 |
2017年(平成29年)~ | 塩見 英治 |
2021年(令和3年)~ | 中条 潮 |
2024年(令和6年)~ | 根本 敏則 |
*印:物故された名誉会員 **印:記録喪失のため年次不明 |
2011年、日本交通学会は前身である東亜交通学会が1941年に創立以来、創立70年を迎えました。
日本交通学会は、創立70周年の記念事業として、以下の二つの事業を企画し、実施しました。
2011年10月15日、神戸大学出光佐三記念六甲台講堂において、「持続可能社会における交通政策」をテーマとして、日米欧を代表する先生方(ケネス・バトン米ジョージ・メイソン大学教授、クリス・ナッシュ英リーズ大学教授、山内弘隆一橋大学教授)からの報告および正司健一神戸大学副学長をモデレーターとして同3教授によるパネルディスカッションを開催しました。
詳細は、『交通学研究』2011年研究年報に掲載予定です(2012年3月刊行予定)。
日本交通学会の総力をあげて、交通の基礎理論から、その機能、政策はもちろん、環境、安全・防災対策まで、現代の社会経済活動に現れる交通事象を体系的かつ論理的に論じたハンドブックを編纂し、白桃書房より刊行いたしました。
詳細は、『交通経済ハンドブック』購入のご案内 をご参照下さい。
2001年、日本交通学会は前身である東亜交通学会が1941年に創立以来、創立60年を迎えました。
当学会の60周年記念事業の趣旨に、多くの方々や機関から多大なご支援、ご賛同をいただき、日本交通学会は、創立60周年の記念事業として、以下の二つの事業を企画し、実施しました。
日本交通学会第60回研究報告会において、「規制改革と交通政策」を大会統一論題のテーマとして、このテーマを国際的視野の下で取り組むために、世界の交通学会の第一線で活躍している国内外の学者の先生方(K.A.Snall カリフォルニア大学教授、J.Preston オックスフォード大学・交通研究所所長、T.H.Oum ブリテッシュ・コロンビア大学教授、金本良嗣 東京大学大学院教授)のご協力を得て、国際シンポジウムを開催しました。
詳細は、『交通学研究』2001年研究年報をご参照下さい。
学会の歴史経過を示す記録誌として、先輩諸氏が苦心して作成された『50年の歩み』の一部の資料を活用し、前会長である増井先生による詳細な回顧記録、廣岡先生に対する50周年を記念してなされたインタビューの記録に加え、これに新たに、創立時の経過を語る『研究年報』に掲載された座談会の記録を収録した『日本交通学会60年の歩み』を刊行しました。
詳細は、日本交通学会60周年記念小冊子をご参照下さい。